京極家の花嫁〜財閥御曹司の秘めた愛〜
史輝が部屋を出て行ってからも、なかなか気持ちが落ち着かなかった。

(どうしよう……すごく楽しみ)

その夜はベッドに入っても、なかなか寝付けなかった。



「えっ? 史輝様とデートするんですか?」

翌朝、美紅の部屋にやって来た明日香に昨夜の話をすると、彼女は興奮したように高い声を上げた。

「デ、デートって言われた訳じゃないんだけど」

「いや、夫婦がふたりきりで遊びに行くんだからデートじゃないですか」

「……そうなのかな?」

「そうですよ」

明日香に断言されて、美紅の胸がトクンと鳴った。

昨夜からずっと落ち着かない気持ちでいるのに、ますます気持ちが高ぶっていくようだ。

「美紅さん、よかったですね」

「うん、ありがとう」

明日香が自分のことのように喜んでくれるのが嬉しい。

気が抜けない本家の暮らしに、徐々に馴染めているのは、美紅の存在によるものが大きい。

「完璧なコーディネイトでおしゃれしないとですね。どこに行く予定なんですか?」

「あ、それがまだ決まってなくて、連絡待ちなの。どこに行きたいか聞かれたんだけど、思いつかなくて史輝に任せたから」
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