りつとるね

初キスは硬かった……?

ちょっぴり嬉しくてじんわりしていると、ふとあることを思い出した。

「そういえばさ、6年のとき、律が私にキスしたことあるって噂を聞いたんだけど……」
他人事みたいに言った。だって私には身に覚えがないから。
「ああ、そんな噂あったな」

あのとき私は躍起になって否定したけど、律は完全黙秘だった。
「なんで否定しなかったの?」
「それは……」
「それは?」
「だって、否定しにくいじゃん」
「え?」
「ウソじゃないからさ」
「ウソじゃないの?」
「覚えてないのか?」
「え? 全然知らない。いつ? どこで? なんで?」
律はムッとして押し黙ってしまった。

「ごめん、律。ホント覚えてない。お願いだから教えて?」
「覚えてないなら無かったってことでいい」
「やだー律! 私のファーストキスだったかもしれないのに。教えて、教えて、教えてー!」
「うっさいなぁ。色気も、恥じらいも、なんも無いな」
「むーっ」

今度は私がむくれる番だった。
乙女の初めてを奪っておいて、黙ってるってありえないよね。事と次第によっちゃ、許さないんだからー!
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