りつとるね
――次はBメロ。ちょっと複雑。タリラ……ラ、ラ?ララ、ンと、タンタタ……っと。
ちょっと危なかったー。けど、なんとか持ち直したよ。てへへ。

ピアノを習ったのは、近所に優秀な先生がいたから。
山崎先生っていって、母とおんなじ年なのに、なめらかなストレートヘアで、赤いワンピースとか似合っちゃう美魔女。
音大ピアノ科の出身で、習いに来る子を次々コンクールに送って賞を取らせちゃうの。

私も小学校の頃はいっぱいコンクールに出させられたよ。んで、優勝しちゃったりね、エッヘン。
トロフィーは今ピアノの上で埃かぶってるけどさ……。

見込まれたのは嬉しかったけど、練習すればするほど上達するから、曲もどんどん難易度の高いのになって。
息切れして、もう練習ヤダーッてなっちゃった。
だって、ピアノの他にもやりたいこといっぱいあったし、自由に遊びたかった。
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