お願い、成仏してください! ~「死んでも君を愛する」と宣言した御曹司が幽霊になって憑きまとってきます~
彼がなにかをするのではないかと見張っていたが、私に悪さをする様子はなかった。
物を通り過ぎるのに椅子に座っている様子もなかなか矛盾する。どういう理屈なのか聞いたけど、彼にもわからないと言った。
いつまでもこうしていても仕方がないし、濡れてべたべたして気持ち悪いし、私はシャワーを浴びることにした。
「お風呂入るから、帰って」
「やだ。ここにいる」
駄々っ子のように、彼は言った。
仕方なく、見ないでね、と言ってシャワーを浴びた。
出てくると、彼はおとなしく座って待っていた。
幽霊ならご飯は食べられないだろうから、自分の分だけ作って食べた。
彼はうらやましそうに私を見ていた。試しに箸を渡そうとしたけど、やはりスカッと空振りをした。
彼に電話をかけてみようかと思ったけど、勇気がなくてやめた。もし彼が出たら、目の前にいるのはいったいなんだというのか。幻覚? そんなの怖すぎる。
でも、もし出なかったら……そのほうがもっと怖い。
夜遅くなっても、彼は一向に出て行ってくれなかった。
仕方なく、彼を放っておいて寝ることにした。
「寝てる間に変なことしないでよ?」
「変なことって?」
「変なことよ!」
怒るように言って、私は扉を閉めた。
どうか夢でありますように。
そう願いながら、眠りについた。
朝になっても彼はいた。
うんざりしながら朝食を食べて、出勤する。
空はどんよりと曇って、今にも降り出しそうだった。
暇なのか、幽霊になったカズも憑いてきた。
ふわふわと浮いたりちゃんと歩いたり、移動は適当だった。
満員電車で人を避けて網棚にゆったり横になっているのを見たときにはちょっとうらやましかった。