お願い、成仏してください! ~「死んでも君を愛する」と宣言した御曹司が幽霊になって憑きまとってきます~
会社に着くと、彼はきょろきょろと周りを見回した。
「ここが紗智の職場かあ」
「変なことしないでよ」
私はこそっと彼に言った。
「しないよ」
彼は自信まんまんに答える。
「なにしろ、全部さわれないからね!」
そういえばそうだった。ホッとしてから、少し複雑な気持ちになる。やっぱり私の幻覚だろうか。病院に行った方がいいのだろうか。
「ほかの人には見えないみたいだなあ。君にだけ見えるなんて、愛のなせるわざかな」
まんざらでもなさそうに彼は言う。
まったく、と私はため息をついた。
確かに、彼は変なことをしなかった。
だけど、ずっと隣で私を見ているから、落ち着いて仕事ができない。ミスを連発してしまい、いちいち彼に指摘された。
「ここのグラフ、おかしくない?」
見てみると、入力された数字が間違っていた。慌てて直す。
「誤字見っけ。同音異義語が多いから変換間違いとかあるよね」
指摘された場所にはたしかに誤字があった。
「ありがとう。でもいちいち言わなくていいよ。あとで見直すんだから」
「そう? じゃあ、あとにするね」
そう言って黙ったのは、一分くらいだった。
「あ、ここも間違ってる」
また指摘され、いらっとした。いちいち仕事が中断されてしまう。
「あとにしてってば」
「でも、気付いちゃうもん。あ、これも間違ってるよ」
「もういい加減に静かにして!」
思わず声が大きくなった。
直後、はっとする。
フロアの全員が自分を見ていた。しーん、と擬態語が浮かびそうな静寂が部屋に満ちる。
「あ、ご、ごめんなさい、間違いです、なんでもないです!」
慌てて謝って、席を立った。
「ここが紗智の職場かあ」
「変なことしないでよ」
私はこそっと彼に言った。
「しないよ」
彼は自信まんまんに答える。
「なにしろ、全部さわれないからね!」
そういえばそうだった。ホッとしてから、少し複雑な気持ちになる。やっぱり私の幻覚だろうか。病院に行った方がいいのだろうか。
「ほかの人には見えないみたいだなあ。君にだけ見えるなんて、愛のなせるわざかな」
まんざらでもなさそうに彼は言う。
まったく、と私はため息をついた。
確かに、彼は変なことをしなかった。
だけど、ずっと隣で私を見ているから、落ち着いて仕事ができない。ミスを連発してしまい、いちいち彼に指摘された。
「ここのグラフ、おかしくない?」
見てみると、入力された数字が間違っていた。慌てて直す。
「誤字見っけ。同音異義語が多いから変換間違いとかあるよね」
指摘された場所にはたしかに誤字があった。
「ありがとう。でもいちいち言わなくていいよ。あとで見直すんだから」
「そう? じゃあ、あとにするね」
そう言って黙ったのは、一分くらいだった。
「あ、ここも間違ってる」
また指摘され、いらっとした。いちいち仕事が中断されてしまう。
「あとにしてってば」
「でも、気付いちゃうもん。あ、これも間違ってるよ」
「もういい加減に静かにして!」
思わず声が大きくなった。
直後、はっとする。
フロアの全員が自分を見ていた。しーん、と擬態語が浮かびそうな静寂が部屋に満ちる。
「あ、ご、ごめんなさい、間違いです、なんでもないです!」
慌てて謝って、席を立った。