お願い、成仏してください! ~「死んでも君を愛する」と宣言した御曹司が幽霊になって憑きまとってきます~
「遺産が入ったら買ってね」
「発言が不穏」

「遺産って俺の金だよ?」
 ぶつくさと彼が文句を言う。
 ふてくされる姿が以前と一緒で、私はふふっと笑った。

「あ、笑った!」
「なによ、珍しいものじゃないでしょ」

「俺が幽霊になってから君が笑うのは初めてだ。よかった、笑ってくれて」
 彼は心底うれしそうに微笑する。

「なによ」
 私の目にまた涙があふれてきた。

「ごめん、なにか変なこと言った?」
「大丈夫」
 私は鼻をすすって彼を見た。

「こんな状態になって、でも一緒にいられてうれしい」
 彼はなんともいえないような表情になった。涙目になり、すくっと立ち上がる。

「ちょっと外の空気吸って来る」
 返事も待たずに彼は壁を通り抜けて出て行った。

「幽霊のくせに。呼吸してないくせに」
 私は目を拭って、スマホで死後認知を検索した。





 翌日、私は目を赤く腫らして出勤した。
「どうしたの? 大丈夫?」
 通りがかった同僚に聞かれて、私はうなずいた。

「大丈夫。病院に行ったけど、なんでもなかったから」
「そう? ならいいけど、お大事に」
 同僚はほっとしたように席に戻って行った。

 私はこっそりため息をついた。

 一つ嘘をつくと、嘘を重ねないといけなくなるのか。

 私の胸に苦い思いが広がって行った。

 私はこれからいくつの嘘をつくことになるのだろう。
 子供が生まれたとして、父親のことはなんと説明したらいいのだろう。

 子供にも彼が見えるのなら、子供に「見えない」と嘘をつかせなくてはならない。

 まだ先のことだ。だが、考え始めると憂鬱だった。
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