ミューズな彼女は俺様医師に甘く奏でられる
「いい子」

 くしゃり、頭を撫でられた。

「私、あなたに頭を撫でられるの好き。甘えたくなるの」

「そうか、そうか、お望みなら身体中を撫で回してやる」

「けど、そういう所は好きじゃない。もっとスマートに口説いて欲しいわ。だって私はお子様だからロマンチックなアプローチに憧れるの」

 上目遣いで挑発すれば、形の良い眉がだらしなく下がって。
 この人は私が好きなんだなぁと実感する。

「そんなに鼻の下を伸ばしたりしたらイケメン医師もかたなしね?」

「別にいいんだ、どうせ桜にしか見せないし。桜だって俺にしか奏でられないだろう?」

 愛しているってーー。

 そんな囁きに目を閉じる。

 桜色の未来にこの胸は踊り、高鳴っていた。
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