ミューズな彼女は俺様医師に甘く奏でられる

10・結末



 休養明け初のコンサートは世界中の注目を集めている。彼女が舞台へ帰ってきた。

 腕の不調、傷害事件、マネージャーとの決別、ここ数ヶ月で彼女の環境は目まぐるしく変化する。その最たるが結婚、伊集院桜は真田桜とし活動をアーティスト活動を再開する。

 もともと目を見張るほどの美貌の持ち主であった桜は結婚した事で、更に輝く。
 氷のように冷たく、譜面を正確に弾く演奏を徹していた彼女が文字通り、音を楽しむ様子は観客の心を鷲掴みにして離さないのだ。

 真田桜の代名詞であるチャルダッシュはクラシックでありながら大きなセールスを記録し、日本の年末番組に呼ばれるとか呼ばれないとか。

 また、兼ねてより懸念されていた伊集院家との不仲も改善しつつある。

 母親は復帰するやいなやレッドカーペットを歩く活躍をみせ、父親は愛娘を傷付けた相手を法の枠組みの中で徹底的に争う構えだ。

 桜はそんな両親に関係者席を用意したとされ、かつての彼女であれば到底考えられない。裁判結果は日を見るより明らかか。

 そして、新生真田桜を語るうえで彼は欠かせないだろう。

 夫であり、主治医のーー真田慎太郎。

 妻への献身的なサポートが世に知れ、今じゃ旦那にしたい医者No.1。

 真田夫婦はべりが丘を特集した雑誌の表紙を飾ると聞く。二人の結婚を記念したベリカ犬は街のあちらこちらで見かける程。

 それからーー。

 それからもう一人。
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