友達が結構重たいやつだった
「‥‥‥‥」

「渋谷君?何?どうかした?」

 呼んでおいて無言とか‥‥どうしたらいいの?

「‥‥‥‥龍二」

「え?」

「龍二って呼んで欲しい‥‥」

「‥‥うん、別にいいけど」

 何?なんなの!?もしかして用事ってそれ?

「あの‥‥できれば今日、買い物に付き合って欲しくて‥‥」

「あー‥‥ごめん、今日は無理なんだ。明日なら行けるけど、急ぎの用事?」

「‥‥‥‥いや、そうだよね。うん、わかった、大丈夫。じゃあ明日で、よろしくお願いします」

「うん、わかった。じゃあ明日ね」

 約束はしたものの‥‥なんで買い物?突然意味不明過ぎるんだが?

 まあいい。正直、今はそれどころではない。今日はこれからクラスの友達咲希ちゃんが男の子を紹介してくれる約束なのだ!

 高校生になったら彼氏が欲しいと思ってたのに、どうしたら彼氏ができるのかが謎過ぎた。

 小学校でも中学校でも男の子の友達は普通にいたけど、好きな人はいたことがなかった。周りの子達が好きな男の子の話で盛り上がっていても、それがどんな感覚なのかいまいちピンとこなかったのだ。

 高校に入ってもそれは変わらず、それこそ龍二みたいにイケメンだなと思う男子は何人かいたが、それが恋になることはなかった‥‥

 ならば出会いの場を増やすしかない。そう考えた私は未開の地を開拓することを決意し、今日がその記念すべき第一回目なのである。

 鼻息も荒く未開の地へと赴いた結果は‥‥あえなく撃沈。まあ、そんな簡単に運命の出会いが待っているとは思ってなかったよ。まだ第一回だし、楽しかったから良しとしよう。

 地球には35億も男がいるらしいし、先は果てしなく長い‥‥いや、果てしないが過ぎるな。日本の15~20歳男子に限ろう。‥‥それでも300万。まだ大丈夫。きっと大丈夫。

 はあああ‥‥よし、切り替えていこう。

 とりあえず今日は龍二と買い物だ。これはこれで謎過ぎるが、考えてもしょうがない。パッと行ってパパッと終わらせよう。

「で?今日は何を買いに行くの?」

「あー‥‥服、とか?」

「服‥‥か、なるほど。駅ビルでいい?」

「うん、それでいい」

 さすがの龍二も今日は不機嫌オーラを封印しているみたいだ。これくらいなら一緒にいても息が詰まることはなさそうで安心する。

「それじゃあ早速行きますか」

 私は龍二と並んで駅までの道を歩き出した。
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