友達が結構重たいやつだった

再出発

 残業続きで土曜も出勤、帰宅後シャワーも浴びずにベッドに倒れ込み、目覚めたら日曜の午後になっていた。

「俺のせいで大変なことになっちゃって本当申し訳ない」

「龍二のせいじゃないよ。悪いのは藤原さんでしょ?それより私こそほったらかしにしてごめんね?」

「それは全然大丈夫。寝てる愛海も可愛かったから。何時間でも見てられる」

 何それ‥‥ちょっと気持ち悪い。

「しばらくこの状態が続くから、落ち着くまでこっちに来ないでいいよ?」

「え!?やだよ!平日の電話も我慢してるんだよ!?寝ててもいいから来させて?お願い!」

「この仕事が終わったら辞める時期の調整をするつもりで人事と話を進めてるから。実家に戻らないでそのまま龍二の家に引っ越せるよう親を説得しようと思ってる。だから龍二には二人で暮らすための家を用意して欲しいんだ」

「うう‥‥わかった。でも家の準備ができたら来てもいいよね?」

 家の準備はそんなに簡単じゃないし、その間に私の仕事も落ち着くだろう。残業代が引っ越し費用の足しになると思えば頑張れる。

 色々ふっ切れて凄まじい程の集中力を発揮した私は、やり直し分のテストをほとんど一人でこなした。多分ゾーン入ってた。途中、何かの向こう側が見えた気がする。

 まあ職場の人達が協力的じゃなかったせいでもあるんだけど。直接文句を言ってくる人もいたし。でも、私があまりにも鬼気迫る感じで仕事に没頭し続けていたせいか、すぐに誰も何も言わなくなった。私の高学歴は伊達じゃないのだ。勉強は集中力こそがものをいう。

 私が抜けたら多分テストの精度が落ちるだろう。でもそれは私のせいではないし、転職しなくても異動で開発グループを抜ける予定だったのだ。あとは残った人達が頑張るしかない。

 仕事が落ち着き、ようやく人事の担当者と退職の件で面談することができた。

「東海林さんが辞めるのは正直痛手だよ。もっと早く手を打てば良かった。どうしても退職の意思は変わらない?」

「はい。やっぱり私の希望は研究職なので」

「はああ‥‥だよね。藤原さんさえ頷いてくれたらすぐにでも開発チームに配属するのに‥‥本当わけわかんないよ」

 結局藤原さんのことは人事部に報告しなかった。私から理由を話しても理解されない可能性の方が高いだろう。藤原さんに否定されたら逆に私の頭がおかしいと思われかねない。そんなのはごめんだ。

 面倒な人に関わってしまったせいで2年も無駄にしてしまった。次の職場で自分に何ができるかもわからない。とにかく頑張るしかない。
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