本日、初恋の幼なじみと初夜を迎えます。~国際弁護士は滾る熱情で生真面目妻を陥落させる~
 圭君ばかりずるい。

 こっちは、見えないとはいえほとんど裸同然の姿でいることに、ずっとそわそわと落ち着かずにいる。気を抜くと挙動不審になりそうだから、彼の洗髪に意識を集中させていた。

 それなのに彼の方はまったく変わらない。いつもと同じ。平然としていて、爽やかで、冷静。すべてがスマートなのは、彼がそれだけ経験豊富だからだ。

 金曜の夜の過ごし方も、おしゃれなバーラウンジも、急遽お泊りになったときの対処も。女性の髪を洗うのだって、きっと一度や二度ではない。

 最初からわかっていたはずなのに、実際に経験値の高さを目の当たりにするとお腹のあたりがモヤモヤしてしまう。
 すこしくらい慌ててみせたらいいのに。
 気づいたら体が勝手に動いていた。

「うわっ!」

 突然顔面にお湯を掛けられた圭君が、驚いた声を上げる。顔についた泡を手で拭い、眉を寄せて戸惑った顔をした。

「急になにをするんだ」
「懐かしいでしょう? 子どもの頃はこの時期、よくみんなで水のかけ合いっこしたわよね」

 座ったまま、もう一度両手で浴槽のお湯をすくって投げつける。
 さすがに二度目は彼も両腕を盾にして泡湯攻撃を防ぐ。それから一度目で濡れた前髪をかき上げながら大きなため息をついた。
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