本日、初恋の幼なじみと初夜を迎えます。~国際弁護士は滾る熱情で生真面目妻を陥落させる~

 今日のことは、圭君には『ちょっと講習会に行かないといけなくなって』とだけ伝えた。
 本当は正直に、卵焼きの上手な作り方を上司の奥さんからレクチャーしてもらうのだと言ってもよかった。だけどせっかくなら秘密にして驚かせたくなった。おいしい卵焼きを焼けたら、彼は喜んでくれるだろうか。

 先週のデート以降、彼の様子がなんだかそれまでと変わってきた気がしている。それがなんなのか、実は私自身もよくわかっていない。爽やかで優しくてとても頼りになるところはなにも変わらない。むしろさらに度合いが増した気がする。こんな完璧な旦那様がほかにいるのだろうかと、思わず通勤途中に周りを見回してしまったくらいだ。

 ただ、夜――というか、家にいるときはかなりの頻度で求められることが増えた。
 今朝だって――。

『あの、圭く……んっ』
『ん?』
『も、もう起きなきゃ。私今日は出かけなきゃ……んっ』
『ああ、もうこんなにして。ゆうべもあんなにシたのにまだ足りない?』
『そんなことは』
『俺はまだ全然足りない。もっと欲しいよ、おまえが』
『……っ!』

 そんなふうに言われたら私なんてひとたまりもない。なにせ彼への恋心を自覚したばかりなのだ。ささいなことでも心臓が止まりそうなほどときめいてしまうのだから、求められて断れという方が無理だ。

 そうして生まれたてのヒヨコのようにあっけなく彼の手に墜ちた私は、午前中いっぱいをベッドの中で過ごし、お昼ご飯をきちんと取るひまもなく家を出ることとなった。
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