本日、初恋の幼なじみと初夜を迎えます。~国際弁護士は滾る熱情で生真面目妻を陥落させる~
 着替える前にシャワーをすると言ったら、お詫びに洗ってあげると言われたが、断固としてお断りした。そんなことをしたら間違いなく遅刻してしまう。上司のお宅にお邪魔するのに、遅れていくなんて絶対にあり得ない。
 圭君はすこし残念そうにしながらも、その後は快く送り出してくれた。

 数時間前のことを思い出したせいで、せっかくエアコンで冷やされた顔がまたしても熱くなってしまう。
 もし上達した卵焼きを彼が喜んでくれたら、この気持ちを彼に告げよう。告白をするのだ。

 すでに夫婦となっているのに今さらだけど、今度こそ逃げずに自分の気持ちをすきな人に伝えたい。もしかしたら困らせてしまうかもしれないけれど、彼は私を冷たく突き放すような人ではない。少しずつでいいから私のことを〝女として〟好きになってもらえるように努力すると伝えたい。十年前に諦めたことを、今度こそ諦めずにがんばりたい。

 その前になすべきことがある。
 手土産の紙袋を持った手に自然と力が入った。

 もしかしたら今回、結城首席の奥様が卵焼きの作り方を私にレクチャーしてもいいと思ったのは、私に直接もの申したいことがあるのかもしれない。以前私は彼女にしたことに対して、謝罪を伝言で済ませてしまった。私もずっとそのことが気になっていたが、自分から進んで顔を合わせることができなかったのである。
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