本日、初恋の幼なじみと初夜を迎えます。~国際弁護士は滾る熱情で生真面目妻を陥落させる~
 ふたりきりになった途端、部屋がしんと静まり返った。仕事柄、初対面の相手との会話は苦手ではないが、相手が相手だ。プライベートということもあって、柄にもなく緊張気味だ。

「すみません、私がお願いしたばっかりにご家族の時間を……」
「本当に気にしないでください。私も北山さんとお話してみたくて」
「わたしと……」
「はい」

 真剣な顔でうなずいたさやかさんに、〝やっぱり〟と思った。きっと彼女もあの日のことで言いたいことがあるのだ。
 それならなおのこと私から切り出さなければ。

「さやかさん」

 居住まいを正した私に彼女が目を丸くする。

「先日は大変失礼いたしました」

 深々と、ひざに置いた手に額がつきそうなほど頭を下げた。

「憶測だけでひどい言葉を投げつけたこと、なんて愚かだったのだろうと猛省しています。本当に申し訳ございませんでした」

 再び沈黙が降りた。
 やはりこれくらいで許してもらおうだなんて甘いのかもしれない。彼女にはこの所の言い分があるはずだ。それを聞いた上で何度でも謝罪するしかない。頭を下げたまま彼女の言葉をじっと待った。

「私、よかったなって思っているんです」
「え?」
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