本日、初恋の幼なじみと初夜を迎えます。~国際弁護士は滾る熱情で生真面目妻を陥落させる~
 無駄な自問自答を繰り返しながら、着替えすらせずに家の中をうろついていたら、テーブルの上の郵便が目に入った。ついさっき、エントランスの集合郵便受けから持って上がったものだ。これでも片づけてすこし落ち着こう。

 チラシをよけ、自分と圭君のものを分けていると茶封筒が目に入った。三つ折りにしたA4用紙が入る縦長のものに『朝比奈様』と印刷した文字が貼り付けてある。

「あれ?」

 裏に返してみたが差出人の名前が見当たらない。開け口部分がしっかりと糊付けされてあるため中身は見えないが、手に持った感じから硬い紙が入っているようだ。私宛なのか圭君宛かわからない。

 ひとまずこのままにしておいて、彼が帰って来たら聞いてみよう。
 封筒をテーブルに戻したところで、玄関ドアが音を立てた。心臓が大きく跳ね上がる。彼が帰ってきたのだ。

 いよいよだわ。落ち着くのよ、香子。

 ドクドクと心臓が大きく脈打ち口から飛び出そうになりながら、そう自分に言い聞かせていていると、廊下に繋がるドアが開いた。

「おっ、お帰りなさい!」

 彼は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに笑顔になる。「ただいま」と言って私のところまでやってきた。
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