本日、初恋の幼なじみと初夜を迎えます。~国際弁護士は滾る熱情で生真面目妻を陥落させる~
「お弁当、ありがとう。おいしかったよ」
「本当?」

 差し出された弁当箱を受け取りながら、ついそう聞き返してしまう。

「ああ、本当だ。前回にも増してうまくなっていて、いつの間にこんなに上達したのかと驚いたな」
「よかった!」

 内心飛び上がりそうなほどうれしかった。彼の帰宅が遅い日を狙ってコソコソと練習を重ねた甲斐があったというものだ。
 それもこれもさやかさんのおかげだ。今度なにかお礼をしなければと思うが、ひとまずそれは後だ。決心が鈍る前にやらればならないことがある。

 私――と言いかけたところで彼が「それは?」と言った。目線をたどるとテーブルの上の封筒に行きつく。

「あ、それ。さっき郵便受けから持って帰ってきた中に入ってたの。宛名が名字だけだから、どっち宛かわからなくて」

 首をかしげる私に、彼はあっさりと「開けてみよう」と封筒を手に取る。チェストからペーパーナイフを取り出し、糊口にスッと通した。中身を見た途端、彼の眉根がグッと寄った。

「これ……香ちゃん、だよな」
「え?」

 彼の手元をのぞき込んで、大きく息をのんだ。
 映っていたのは間違いなく私――と結城首席だ。私服姿の私達が、マンションのエントランスで微笑み合っている。他にも何枚か同じような写真が出てきた。
< 127 / 154 >

この作品をシェア

pagetop