本日、初恋の幼なじみと初夜を迎えます。~国際弁護士は滾る熱情で生真面目妻を陥落させる~
「こんばんは、北山さん。あ、今は朝比奈さんと呼んだ方がいいですか?」
「どうしてそのことを」
「そんなの、先生に直接教えてもらったに決まっているじゃない」
「……そう。本人が話したなら私はなにも。急ぎますので」

 速足で彼女の前を通り抜ける。なにが言いたいか知らないけれど、今は立ち話をしている場合ではない。

「そんなに急いで、どこに行くつもり?」

 私がどこへ行こうと彼女には関係ない。質問になにも返さず、隣を通りすぎた直後。

「もしかして圭吾さんから家を追い出されました?」

 ピクリと反応し足を止める。振り返ると勝ち誇った笑みが目に入った。

「それで別の男のところへ行くとか?」

 クスクスと笑う彼女に、『やっぱり』と思った。

「あなただったの? あの写真を送ってきたのは」
「なんのことでしょう」

 彼女が手で押さえた口元がニヤリと上がるのがはっきりと見えた。

 圭君に『心当たりがある人物は?』と聞かれたとき、真っ先に頭に思い浮かんだのは彼女だった。それを口に出さなかったのは、直接会ったことがあるというだけで名前を挙げるのは早計だと思ったからだ。私を邪魔に思う女性は、きっと彼女だけではないはずだ。

「そんなことまでして私から彼を奪おうと考えるなんて……」
「彼を奪ったのはあなたの方じゃない!」
「どういうこと?」
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