本日、初恋の幼なじみと初夜を迎えます。~国際弁護士は滾る熱情で生真面目妻を陥落させる~
「私の叔父は有名大学を卒業して大手飲料メーカーの本社で部長をしているの」

 だから何だというのだろう。急に始まった身内自慢に付き合うほどこっちは暇じゃない。

「自慢話ならよそで――」
「私は! 叔父から『近々いい話があるぞ』と聞いていたの!」

 遮るように大きな声を出され、驚くと共にあきれた。ここまでひとの話を聞かない人間は初めてだ。そんな人に耳を傾けるだけ無駄というものだ。
 とにかくあの写真の送り主がわかったことだけでも圭君に報告しよう。彼の職場の人だから、後は彼に任せればいいはずだ。

 もうなにも言わず背を向けて、足を一歩踏み出した――が、次の瞬間。

「そのお見合いの相手が圭吾さんだったの!」

 後ろから聞こえた言葉に足を止めた。

「叔父は松崎所長とは大学の先輩後輩で、私にちょうどいい相手がいるからって。最初はこの年でお見合いなんて嫌だって思ったけど、せっかくだから一緒に働いてみて考えたらどうかって言うから入所したわ。そしたら彼は思ったよりも何倍も素敵な人で、それならお見合いの話を正式に進めてもらおうかと思っていたところだったのに!」

 背中に向かってマシンガンのように次々と言いたいことをぶつけてくる。人のことを壁かなんかだと思っているのだろうか。

 だけどされてみて初めてわかった。話を聞く気のない相手に一方的に言葉をぶつけられるのがどれほど気力を削ぐものかということを。さやかさんに対して私がやったのはそういうことなのだ。

 過去の自分が目の前に立っているような錯覚に陥り、胸に苦い思いが胸に充満する。
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