本日、初恋の幼なじみと初夜を迎えます。~国際弁護士は滾る熱情で生真面目妻を陥落させる~
 後頭部にさっと彼の手が差し込まれたため、痛い思いはしなかったものの、反転した視界に思考が停止した。ダイニングテーブルにあおむけになっていることだけはわかった。

 なんでこんなことに……。

 私が家を出る時間はほとんど毎日同じなので、こんなことをしている時間はないと彼も知っているはずだ。今日はただでさえ朝ご飯とお弁当もある。

 近づいてくる顔にギュッとまぶたを閉じる。唇が重なる直前、思い切って両手を突き出し彼の胸を押した。

「ちょっと待って!」
「どうして」

 どうしてって……! 

「し、仕事に行かなきゃ」
「今日は少し遅めでも大丈夫」

 いやいやいやいや……!
 そっちは大丈夫かもしれないけど、こっちは無理ですから! 

 今からそんなことをされたら、さすがに仕事に遅れてしまう。

「無理のないよう、早めに終われるよう調整するから」

 調整って……! そんな残業のお願いじゃあるまいし!

 いつもの情事を振り返ってみても、今からなんて絶対に無理だ。体力のある彼は大丈夫かもしれないけれど、間違いなく私はヘロヘロになってまともに動けるまで時間を要してしまう。そんな余裕が今この場にあるはずがない。
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