君のブレスが切れるまで―on a rainyday remember love―

第1話 産まれる≠生きている

 この世に生を受けること、それは幸せなことか?
 近年、虐待やいじめが増加し自殺者が増えている現代で、果たしてそれが本当に幸せだと言えるのか?


 私にはわからない。


 将来のために勉学を励み、莫大なお金を手に入れ、不自由ない生活が送られることが幸せ? それが幸せの定義だとするならば、私はこの家に産まれて幸せだったのだろう。


 私にはわからない。それが幸せだと感じたことがないから。


 私も一度は死を選んだ人間の一人だった。生きていくことに何ら差し支えのない環境で育ったにもかかわらず、その選択をしたことがあった。
 恵まれている。きっと誰よりも恵まれていて、そのくせに死を選んだ。同じように死を選んだ人からすれば、激怒されても反論はできない。それでも私は死にたかったのだ。けれど、気が変わった。それどころか生きたいと願ってしまった。
 少しだけ聞いてもらえるかしら?
 語ることができなかった日々を。この眼が何を見ていたのか、私が何をしていたのかを。
 死を願っていたはずの私を救い出し、幸せの意味を教えてくれた女の子の話を。そして、その子と過ごしたわずかな日々を――

< 1 / 71 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop