君のブレスが切れるまで―on a rainyday remember love―

第2話 名前のわからないモノ

 2007年 6月


 六歳になった頃、親に連れられて自分が産まれた祖国へと帰ってきた。
 この国のこの時期はよく天気が崩れる。私の名と同じものが天から降り注ぐのだ。じっと睨みつけるように、空を覆い尽くす鈍色雲を見上げる。


『136便は間もなく出発いたします。搭乗手続きのお済みでない方は――』


 この名前が嫌いだ。付けられたこれには意味なんてなく、個として呼ばれるためのもの。つまり、番号と変わりない。


「雨。しばらくの間、日本に滞在するの。その間、総一朗と一緒に屋敷へと戻ってもらうことになるわ」
「はい、お母様」


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