君のブレスが切れるまで―on a rainyday remember love―
 相変わらず無愛想な子、と思っている顔だ。これ以外の顔を作ることができないのだから仕方がない。父親は私に目もくれず時間を気にしているようだった。
 両親は私に手を振ることも、さよならを告げることもせずに空港から去っていく。
 両親に背を向けると、久々に対面した執事の姿が目に映った。


「久しゅうございますお嬢様。成長されましたね」
「総一朗こそ元気そう。だけど、これからまた苦労をかけることになる」
「そんなことは……いえ、こんな老骨に気をかけてくれるお嬢様はお優しいですな」


 総一朗は苦笑し、そう伝えてくれた。私の目付け役である彼には悪いとは思っている。今日、私はこの幸せの中で死ぬことを選んだのだから。


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