契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
「希実」
「……っ」
耳に直接注ぐように、名前を呼ばないでほしい。
ゾクゾクとして、不本意ながら力が抜けてしまう。
抵抗しきれず希実の腕は横にどけられ、結局上気した顔どころか潤んだ瞳まで見られてしまった。
しかも眼鏡のレンズが曇っている。
何とも冴えない状況にいささか悔しくなって、希実は眼鏡を外し曇りを拭った。
「……っ、東雲さんは意地悪です……っ」
「ごめんね。あんまり可愛らしい反応をするから、つい」
眼尻の滴を彼が唇で吸い取って、希実の頭を撫でてきた。
甘やかされているような、揶揄われているような、よく分からない扱いだ。
それなのに希実の胸中にあるのは怒りや不快感などの負の感情ではない。
まだ正確な名前は付けられなくても、重石のように心を沈ませる種類とは真逆の何かだった。
「……っ」
耳に直接注ぐように、名前を呼ばないでほしい。
ゾクゾクとして、不本意ながら力が抜けてしまう。
抵抗しきれず希実の腕は横にどけられ、結局上気した顔どころか潤んだ瞳まで見られてしまった。
しかも眼鏡のレンズが曇っている。
何とも冴えない状況にいささか悔しくなって、希実は眼鏡を外し曇りを拭った。
「……っ、東雲さんは意地悪です……っ」
「ごめんね。あんまり可愛らしい反応をするから、つい」
眼尻の滴を彼が唇で吸い取って、希実の頭を撫でてきた。
甘やかされているような、揶揄われているような、よく分からない扱いだ。
それなのに希実の胸中にあるのは怒りや不快感などの負の感情ではない。
まだ正確な名前は付けられなくても、重石のように心を沈ませる種類とは真逆の何かだった。