契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
 自分でも驚くほど大きな声が出た。
 シン……と食堂内が静まり返る。
 希実の悪口を言っていた第三者も、愕然として黙り込んだ。

 ――やってしまった……

 最終的に自分が一番騒いで衆目を集めたのを感じ、希実は頭を抱えたい気分に苛まれた。
 許されるなら、もうこの場にしゃがみ込みたい。何なら、なかったことにして逃げたいくらいだ。
 が、そうはいかない空気が漂っている。
 図らずも、真っ向勝負に出た形になり、今更睨み合いを放棄できなくなっていた。

 ――これはどう収拾をつけたらいいの……?

 喧嘩などしたことがないため、終わらせ方が分からない。
 もっと相手を威圧するべきか。それとも笑ってごまかすのが正解か。はたまた大人の余裕で立ち去ってしまえばいいのか。
 引き際に悩んでいると、突然張り詰めていた空気が変わった。

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