前世恋人だった副社長が、甘すぎる
フロントに戻り、次に休憩に入るスタッフと交代した。
金曜日の今日は、ホテルも大繁盛。ひっきりなしに客がやってくる。
私は持ち前のお嬢様スキルで接客を軽々こなし、外国人観光客には外国語で対応する。
「よいご滞在を」
カードキーを渡し、
「お次のお客様」
笑顔で並んでいる次の客を呼ぶ。
次の客は、黒いコートを着ていた。
すらっと背が高く、黒い髪がさらりと靡いた。
私よりも少し歳上なだけだが、佇まいだけで知性や上品さを感じる。
……そう、夢の中で見る、前世の貴族のような。