前世恋人だった副社長が、甘すぎる
昨日のことのように思い出す、彼の柔らかい金色の髪、私を見て細められるその瞳。
「クリスチーヌ様」
名前を呼ぶ、低くて甘い声。
その突き出された両腕の間に飛び込むと、土の香りと甘い匂いと熱い体温に包まれ、このまま溶けて一つになってしまいたいとさえ思った。
「クリスチーヌ様、夕食の準備が整いました」
「マルク。今日は私が作ると言ったのに」
「作るだなんて、とんでもございません。
綺麗なクリスチーヌ様の手に、傷でも入ったら……
さあ、出来ました。どうぞおかけください。
食べやすいように切って、お口に入れて差し上げます」
彼はそう言って、鹿肉のステーキをナイフで切り、私の口に運ぶ。
家とは違う、炭火で焼いたその庶民的な肉の塊を、私はぱくりと口に入れる。
「クリスチーヌ様、お味はいかがですか?」
「とても美味しいわ」
まるで子供のように目を開く私を見て、彼はそっと微笑む。
「マルクも食べる?」
すると彼は優しい瞳のまま、甘っぽい声で告げたのだ。
「ええ、いただきます。
……口移しで食べさせてください」