曇りのち晴れ、SWAN航空幸せ行き〜奥様はエリートパイロットともう一度愛しあう〜

第二話

「もう、お別れしてあげよう」

 希空はやっと決心がついた。 

 もしかしたら昨日の交わりで、お腹の中に命が宿っているかも知れない。
 そうだといい。願いを込めて、そっと腹部に手を当てる。

 昨晩の理人は避妊していなかったように思う。情熱のままに愛し合い、授かったなら後悔はない。

 希空は我知らず、微笑んでいた。

 彼の子供さえいてくれれば、理人がいない喪失感にどれだけ苛まれても、生きていける気がする。

「……もしかしたら、優空(ゆら)ちゃんを孕ったとき、お姉ちゃんもこんな気持ちだったのかな」

 シングルマザーをしている姉を思う。

 子供の父親のことを一切口にしない姉を、男に騙されたことが辛いのかと思っていたが。
 愛された記憶があれば生きていける、と姉も考えたのかも知れない。

「メールでいいかな……そうだ」

 理人が初めて希空を誘惑してくれた「コシャリ」で、今度は自分が彼を誘惑してみようか。

「食事に行こうって理人さんを誘おう」

 魅惑的に踊ることで、女であることを楽しむ。
 彼を愛せたことを幸せに思い、彼がとぶ空がいつでも素晴らしいことを祈って……それで、彼との人生を最後にするのだ。

「離婚届けは家に置いておけばいいよね」

 そうと決まれば、ベリーダンスの練習をもっと練習しておかなければならない。
 理人が踊るたび、彼を魅了させようとした女がいたことを思い出してほしい。

 希空は二人のシフトが合う日を確認する。
 出来れば希空は二日連続休みで、理人が休日の次の日は早番がいい。

「あった。……ちょうど、八月一日。理人さんと初めて会った日だ……」

 コシャリに二人分の食事の予約を入れていた希空は、自分が涙を流しているのに気づかなかった。
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