濁った僕を抱きしめて
糸雨
出会いはムードもクソもなかった。


制服姿で雨に打たれて、何も映していない瞳で地面を見つめるわたしに、あなたは声をかけてきた。


今思ってもなんで助けてくれたのか分からない。わたしを助けることであなたに徳があったとは思えない。


……それでも。


こうやって、出会ってしまったから。
愛を、知ってしまったから。


ーもう二度と、昔の自分には戻れない。


そんなことを考えて、時々怖くなる。


もしあなたがわたしを捨てたら?
わたしはどうやって生きていけばいい?


あなたといない世界で、わたしは生きていける気がしない。
だからどうか。


わたしと、一緒にいて。


こんな汚くて濁ったわたしだけど、それでもいいなら。
というか、あなたもわたしと同じようなものか。


だったらお似合いだ。


この理不尽だらけの世界で、わたしとあなた。
痛いほどに手を握って、苦しいほどに抱きしめあって。


ふたり、生きていこう。
< 1 / 241 >

この作品をシェア

pagetop