濁った僕を抱きしめて
第1章 黒雨

ーであいー

第1章


黒雨




第1節


ーであいー


1



…寒い。寒い。


やっぱりもう一枚着てくれば良かった。


そんなことを思いながら膝を抱き、顔をぐりぐりと埋める。


昨日から今日にかけて、ずっと雨が降っている。
それはもううんざりするほど。


制服のポケットを探り、スマホを取り出す。
お母さんから何回も電話が来ている。


ーーこういう時だけ、心配するんだ。


一回そう思ってしまえば、鬱陶しくて仕方なかった。
家にいたらいたで迷惑そうにするくせに、いないとなると頼ってくる。


ーークソ親の手本みたいだ。


スマホの電源を切り、またポケットにしまった。


家出をしたのは昨日のこと。
すべてに嫌気が差して、家を出たくて仕方なかった。


何着かの着替えとスマホ、スマホの充電器にメイク道具。
それらを詰めたカバンは重かったけど、これで家を出れると思えば軽かった。


ーー縋って来る、親の重さより。
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