濁った僕を抱きしめて
何かひとつ乗り越えたと思ったら、またひとつ問題が浮かんでくる。


走っても走ってもゴールが見えない持久走みたいで、息が苦しくなる。


何とか家に着いた。
鞄の中から鍵を探すけど、焦りと手汗で物が手を滑っていく。


底に入り込んでいた鍵を何とか見つけ出し、差し込んで左に回す。
ぜえぜえとあえぎながら家に入って靴を脱ぐ。


家の中は誰もいないように静かで、ただテレビから流れるニュース番組の音だけが聞こえる。


まさか。


足をもつれさせながらリビングのドアを開けた。


拓海くんはソファに座って、大きなテレビ画面を見つめている。


「拓海くん」
「……璃恋、買い物は?何も持ってないじゃん」
「それより」
「これのこと?」


拓海くんがテレビ画面を指差す。
画面には拓海くんの名前と、顔写真がでかでかと出されていた。


「これ見たから帰ってきたの?」
「違うんです、いや違くないんですけど、母親が突然電話してきて、それで」
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