濁った僕を抱きしめて
「どうして、人を殺すんですか。教えてくれませんか」


璃恋の目が潤む。
俺の過去を、璃恋に背負わせていいのだろうか。


俺の過去は、高校生の璃恋が背負うには重すぎる。
重くて、醜くて、汚れたものだ。


「……そんな、話せるものじゃないよ。俺の過去なんて」
「いいです」


手のひらが重ねられる。
伝わってくる温度は、俺には温かすぎる。
俺は璃恋と出会うまで、どん底にいた。


ドブに(まみ)れた、汚い捨て猫のような。


「……長くなるよ、話すと」
「いいですよ、どれだけ長くなっても。ぜんぶ聞きます」


俺は、ぽつりぽつりと過去を話し始めた。



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