どうやら私、蓮くんに愛されているようです
ん……頭が重い。

目覚めた恵那はゆっくりと身体を起こす。
店を出てからの記憶がない。
自分の身なりを確認すれば、パジャマ姿だった。

やってしまった……

恵那はベッドから立ち上がると、寝室のドアをそっと開け、顔だけ出してリビングを見回した。
カウンターキッチンに視線を移動させれば、爽やかな笑顔が視界に飛び込んだ。

「おはよう、恵那ちゃん。気持ち悪くない?」

「うん」

「お粥食べる?」

「うん」

「シャワー浴びてさっぱりしておいで」

「うん……蓮くん」

「ん?」

「着替えさせてくれた?」

「うん、着替えたいって言うから」

「ありがとう。でも私、何も覚えてない」

「だろうね。ちゃんと帰って来てくれたから良かったよ。ほら、早くさっぱりしておいで」

「うん」

恵那は俯きながらバスルームへと向かった。


柳楽蓮(やぎられん)、恵那より3歳年下の28歳。
半年前、会社から歩いて10分程の川辺で出会った。
夕焼けが綺麗な場所だ。
恵那が仕事で落ち込んでいる時、薫子に連れられやって来た大切な場所。

「夕焼けってね、心を穏やかにして、浄化させてくれる作用があるんですって。オレンジ色のあたたかい光には、傷ついた心に勇気を与えるパワーもあるみたいよ。ここは私のパワースポットなの」

穏やかに語る薫子の横顔は、とても美しかった。
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