どうやら私、蓮くんに愛されているようです
希望の光
まもなく会社は買収され、臨時株主総会により役員編成が行われた。
業績不振の責任を問われた社長をはじめとする役員は辞任に追い込まれ、社員には転職希望者や、早期退職希望者を募ったが、退職希望者は誰もいなかった。
なにせ、親会社がRYUSHOホールディングスなのだ。福利厚生も充実し、社員にとってはメリットの方が大きく辞める理由がない。

会社は買収されたが、社名はそのままに、恵那を含む社員は勤務先が変わることもなく、これまで通りの業務を行い、買収前と変わらぬ日常を送っている。
やはり、最大のメリットは、諸悪の根源でもあった役員たちが解任されたことだ。
新社長には、RYUSHOホールディングス代表取締役が兼任することとなった。

しかし、社員全員がそのまま雇用されるわけではない。管理職の面々は、本社の面談によって降格か否か判断されることになっている。
その対象に課長職の紗夜子が含まれていることは言うまでもない。


管理職の面談が終わり、後日、恵那も本社役員から呼び出しを受けた。

何故私まで呼び出し?
何かしてしまったかな?

不安を抱えながら本社へ向かった。

重厚感あふれる本社の会議室。
楕円のミーティングテーブルを囲む黒い革張りの椅子の一つに、恵那は背筋を伸ばし座っている。

しばらくすると、ドアがノックされ、扉が開いた。
立ち上がり恵那に近寄る人物の顔を見た瞬間、恵那は目を見開いた。
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