どうやら私、蓮くんに愛されているようです
秋の終わりを感じる休日の午後、恵那と蓮は薫子の病室を訪れ、ベッドサイドに置いてあったパイプ椅子にそれぞれ並んで腰掛けた。

「母さん、調子はどう?」

蓮が穏やかに声をかける。

「恵那ちゃんと一緒に来たから驚いてる? いや、驚いてないかな? 本当はわかってたんだろ? こうなること」

「え? 蓮くん、どうしてそう思うの?」

「母さんの顔見てたらなんとなくそう思った」

恵那は薫子の顔を覗き込んだ。

「月島社長、なんだか今日はイタズラっぽく笑ってるような気がする。気のせいかなぁ」

「案外気のせいじゃないかもしれないよ」

「蓮くんと私が一緒にいて驚かないんだったら、私たちが結婚してたとしても驚かないのかなぁ……」

えっ⁉︎ 私は何を言っているの? バカバカバカバカ! 願望がついポロリと……
いったい蓮はどう思ったのだろう。今どんな顔をしているのだろう。きっと困っているよなぁ。いや、引いたかもしれない。思わず俯いてしまった。

「だったら、子供がいても驚かないかもね」

「・・・え? ・・え? えぇぇぇぇぇっ⁉︎」

顔を上げると蓮はニコニコ笑っていた。

「それはいったいどういう……」

「そういうことだけど。恵那ちゃんが言ったんでしょ、俺と結婚してても驚かないかなって」

「はい、確かに言いましたが……」

「俺と恵那ちゃんの子供かぁ、早く会いたいなぁ。俺、頑張んなきゃ」

「頑張る?」

「それ、訊く?」

蓮は恵那の耳に顔を寄せた。

「今夜、覚悟しなよ」

耳元で囁かれ、全身が一気に熱を帯び、心臓が体内から飛び出しそうなほど激しく脈打った。

「真っ赤な顔して、俺の恵那ちゃんはホント可愛い」

薫子の前にも関わらず、蓮は恵那の唇に軽いキスを落とした。
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