どうやら私、蓮くんに愛されているようです
幸せになろう
薫子を愛する人たちに守られたルクススペイは、新体制となって動き始めた。

リーズナブルで可愛らしく、それでいてしっかりとした商品を提供する。

そのために、役職を問わず垣根を超えて、アイデアや意見を募ることにした。どんな些細なことも取りこぼしたくはない。


恵那が外出先から戻り、商品開発部の通路を歩いていると、

「堅石部長!」

背後から声をかけられた。

振り向くと、女性社員が息を切らし、大きく肩を上下させている。階段を駆け上がってきたのだろうか。

「あなたは経理課の安曇(あずみ)さん、よね?」

「えっ⁉︎ 私のことを知っていらっしゃるのですか?」

「社員のことは、部署が違っても覚えるようにしているの」

薫子も全社員の名前を覚えていた。どんな考えを持って入社したのかもきちんと把握していた。
恵那自身もそうありたいと、部長職に就いてからはより強く思うようになり実践している。

「何か困ったことでもあったの?」

「いいえ、部長にお訊きしたいことがありまして」

「何かしら?」

「商品のアイデアは、本当に誰でも出してよろしいのでしょうか?」

「ええ」

「私も、ですか?」

「もちろんよ」

「商品化したいものをレポートか何かにまとめて提出すればいいですか」

「そうしてもらうと嬉しいわ」

「わかりました! 後日お持ちしますので、よろしくお願いします!」

「楽しみにしているわね」

「はい!」

踵を返し、戻っていく後ろ姿を見送りながら、恵那は新入社員時の自分と重ねていた。

「頑張れ」

自然と口から溢れ出た。

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