どうやら私、蓮くんに愛されているようです
今日は飲みたい気分だなぁ
明日は休みだしなぁ
よし! 飲みに行こう。

恵那は最寄駅近くにある行きつけの居酒屋へ向かった。
立て付けの悪い引き戸をガラガラと開けると、恰幅の良い大将の渋声が出迎える。

「こんばんは」

「おぉ〜恵那ちゃん、いらっしゃい、そこでいいかい?」

大将が視線でカウンター席を指した。

「はい、失礼します」

「生でいい?」

「お願いします。あといつもの」

注文しながら回転椅子に腰を下ろし一息つく。

出されたおしぼりで手を拭き、目の前に置かれた生ビールを一気に流し込んだ。

「おいおい、そんな一気に飲んだら……まぁ、いいか。なんかあったんだろう?」

恵那は空になったジョッキをカウンターテーブルにドンッと置き、大きく息を吐いた。

「さすが大将、お見通し。おかわりください」

「おかわりの前にほら、いつもの」

「うわぁ!美味しそう」

皿に盛られたごぼう揚げの甘辛い醤油の香りが食欲をそそる。

「いただきます」

安定の美味しさに笑みが漏れた。

生ビールにごぼう揚げ、恵那一推しメニューだ。
飲んで飲んで食べたてまた飲んで、ハイペースの恵那はとうとう大将からストップをかけられた。

「恵那ちゃん、今日はもう終わり」

「えぇぇぇぇ」

不貞腐れる恵那。

「タクシー呼んだから、もう帰って寝な。倒れでもしたら洒落にならん」

「わっかりましたぁ。堅石恵那、帰還しまぁ〜す」

敬礼をし、店を出た恵那は、大将が呼んだタクシーに乗り自宅マンション前に到着すると、千鳥足でようやく部屋に辿り着いた。

15階建てのオートロックマンション、13階フロアーの1LDKが恵那の部屋だ。広めのリビングに12畳ほどの寝室。カウンターキッチンになっていて、料理をしながらでもテレビを見ることができるのだが、恵那はあまり料理をしないので意味がない。

衝動買いした三人掛けソファーに倒れ込むように身を預け、大きく息を吐いた。
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