プラトニックな事実婚から始めませんか?
「そうなんだね。やっぱり、お姉さんのことは意識しちゃうよね」
「だよね。でももう、考えるのやめにする」

 普段からあまり強気の発言をしない彼女が決意を表明するみたいに言うから、ちょっと驚く。

「やめにするって?」
「お盆にお墓参り行ってきてね、お姉ちゃんには謝ったんだ。でも、好きなものは好きだから仕方ないでしょって、強気に話しちゃった」
「気持ち、伝わったかな」
「伝わってるといいな。でも、好きなだけならいいよね?」

 情けなさそうに眉をさげるから、励ましたくなる。

「もしかしたら、お姉さんが許してくれるときには、芹奈にもいいことが起きるかも」
「いいことかぁ。あ、ねぇ、祥子は? 祥子はいいことあった?」
「私? 全然ないよ。……って、ないって言い方も変だよね。啓介とは順調だよ。こんなにも合う人っていたんだって驚くぐらい」

 なんでもない話も楽しげに聞いてくれる啓介と過ごす時間が大切で、私を甘やかす彼が甘えてくる夜も愛おしい。

「羨ましいー。毎日があたりまえのようにいいことだらけってことだもんね。それだけ合うなら、結婚の話とか出ないの?」
「うーん。最初のときの方が、そういうの意識してたのかも。今はそういう話もしないよ。このままずっと一緒にいられたらいいねって、お互いに思ってるんだと思う」
「そうなんだねぇ。じゃあ、私たち、お互いに何も変わらないままだね」
「あ、本当だね」

 顔を見合わせてクスッと笑ったとき、乗り物から降りてきたのんちゃんが、「ママー」って芹奈に向かって駆けてくるのが見えた。
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