プラトニックな事実婚から始めませんか?
 唐突すぎる質問に面食らう。急に芹奈を気にするなんて、どうしたんだろう。

「あー、どうかな。体調のこと気にしてる感じはあるよね。……啓介って、芹奈が手術したの、知ってる?」
「祥子も聞いた?」
「じゃあ、啓介も知ってるんだ?」
「知ってるっていうかさ、芹奈に取材して記事書いたこともあるんだよ。若い女性にもっと検診を受けてほしいって、啓蒙活動のさ」
「そうだったんだ……。私、全然知らなくて」
「芹奈、ほかに何か言ってたか?」

 話してもいいんだろうか。芹奈が誠也さんを好きだって。でも、啓介に話してもいいことなら、もう彼女から先に話してるだろうとも思う。

「あ、ううん。のんちゃんがかわいいって話だけ。ほら、のんちゃんってお母さん似だから、芹奈にも似てるじゃない? 自分の子どもみたいにかわいがってるんだって。成人するまで見守りたいって思ってるみたいだったよ」
「だよなぁ。難しいところだよな」
「難しいって、何が?」

 やっぱり、今日の啓介は変だ。彼にも話せないことがあるみたい。

「あ、いや、こっちの話」
「気になるじゃない」
「あー、なんていうかさ、誠也さんと芹奈が気まずくなったら、芹奈ものんちゃんと会いにくくなるだろうなって思ってさ」
「気まずくなるって?」
「たとえばの話だよ」

 啓介はごまかすように笑うと、冷蔵庫からコーヒー豆を取り出す。そして、何かを思い出したように口を開く。

「来週なんだけどさ、取材に行ってくるよ。家あけるけど、心配しなくて大丈夫だから」
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