プラトニックな事実婚から始めませんか?
「ハサミ、あったかな」
部屋を出ようとしたが、仕事部屋まで行くのが億劫で、祥子のドレッサーに近づく。
よく使う化粧品だろうか、少しばかりの口紅や化粧水が置かれているが、見えるところにハサミはない。
「ちょっと悪いな」
両手を顔の前で軽く合わせ、引き出しを開く。ハサミぐらいすぐに見つかるだろうと思っていたが、数々の化粧品が整然と並んでいるだけだ。
やっぱり、部屋まで行くか。と、あきらめつつ、もう一段下の引き出しを開いたとき、俺は白い封筒に気づいた。
「なんだ?」
それは、祥子宛の消印のない封筒だった。宛名を書いたのは、女性だろう。かわいらしい丸文字で、妙な無邪気さを感じる。
「芹奈じゃないよな」
芹奈は細く長い繊細な文字を書く。
元警察官の勘だろうか。どうにも気になって、封筒を手に取る。自分は正しいことをしていない。その自覚はあるし、一緒に暮らしているからと言って、彼女のすべてを知ろうとするのも間違いだとわかっている。
しかし、祥子から芹奈以外の友人の話を聞いたことはないし、まして、手紙のやり取りをする友人がいるような話も聞いていない。
百歩譲ったとしても、友人からならもっとかわいらしい封筒を使うんじゃないかとか、様付けの宛名書きなのに、住所が書かれていないのはおかしいんじゃないかとか、とにかく異様な雰囲気を感じ取って、放っておけないと思った。
「祥子、ごめん」
謝罪にもならない謝罪をつぶやいて、封筒を開く。中には、封筒と同じ、素っ気ない白い便箋が一枚入っていた。
部屋を出ようとしたが、仕事部屋まで行くのが億劫で、祥子のドレッサーに近づく。
よく使う化粧品だろうか、少しばかりの口紅や化粧水が置かれているが、見えるところにハサミはない。
「ちょっと悪いな」
両手を顔の前で軽く合わせ、引き出しを開く。ハサミぐらいすぐに見つかるだろうと思っていたが、数々の化粧品が整然と並んでいるだけだ。
やっぱり、部屋まで行くか。と、あきらめつつ、もう一段下の引き出しを開いたとき、俺は白い封筒に気づいた。
「なんだ?」
それは、祥子宛の消印のない封筒だった。宛名を書いたのは、女性だろう。かわいらしい丸文字で、妙な無邪気さを感じる。
「芹奈じゃないよな」
芹奈は細く長い繊細な文字を書く。
元警察官の勘だろうか。どうにも気になって、封筒を手に取る。自分は正しいことをしていない。その自覚はあるし、一緒に暮らしているからと言って、彼女のすべてを知ろうとするのも間違いだとわかっている。
しかし、祥子から芹奈以外の友人の話を聞いたことはないし、まして、手紙のやり取りをする友人がいるような話も聞いていない。
百歩譲ったとしても、友人からならもっとかわいらしい封筒を使うんじゃないかとか、様付けの宛名書きなのに、住所が書かれていないのはおかしいんじゃないかとか、とにかく異様な雰囲気を感じ取って、放っておけないと思った。
「祥子、ごめん」
謝罪にもならない謝罪をつぶやいて、封筒を開く。中には、封筒と同じ、素っ気ない白い便箋が一枚入っていた。