プラトニックな事実婚から始めませんか?
 翌朝ははやく目が覚めた。私の肩に寄り添うようにして鼻をうずめる啓介の寝息が心地よくて、そっと身体を寄せると、無意識の彼が抱きしめてくれる。

 ほんのり、お酒の匂いがする。約束通り、日付が変わる前に帰宅した彼は、起きて待っていた私に頼みがあると相談してきた。

 私にも啓介のためにできることがあるんだと思ったらうれしくて、任せて、と答えた。

 髪をなでても起きない啓介の腕から抜け出して、ベッドを降りる。私を探すみたいにシーツをさぐる彼におかしくなりながら、スマホに届いていた芹奈からのメールを確認し、エプロンの入ったバッグを持って玄関を出た。

「芹奈、おはよう。昨日は遅くにメールしてごめんね」

 一見駅で芹奈と合流し、パン教室へと歩いて向かう。

「ううん、全然いいよ。私は大丈夫だからね」
「ありがとう」
「あとさ、啓介、あの手紙出してきた不倫相手のこと、まだ調べてるんだよね?」
「誠也さんもすごく協力してくれてるみたい。啓介ともよく飲みに行ってるよね。のんちゃん預けてばっかりで、申し訳なく思ってるみたい」
「それはいいんだよ。でもね、お母さんの様子がちょっと変なんだー」

 芹奈は苦笑いするみたいな息を吐く。

「変って?」
「少し前にね、誠也さんがお母さんに折り入って話があるって呼び出しててね。あれから、お母さん、私に何か言いたそうでさー。のんちゃんと私の関係性っていうの? ちょっと気になってるのかなって……」
「のんちゃんとうまくいってないの?」
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