心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 バタン

 部屋の扉を閉めて、急いで階段を駆け下りる。
 外にイザベラの馬車がないことを確認してから、2人は別邸を飛び出し夜の庭を猛スピードで走った。

 屋敷に戻るなり、グレイは真っ直ぐにイザベラの部屋へと向かう。
 別邸の鍵をいつものようにテーブルの上に乱雑に置くと、「ふぅ……」と一息ついた。
 


 間に合った。
 まだあの女には、俺がマリアの存在に気づいたことを知られたくないからな……。


 
 イザベラの部屋を出てそのまま自分の部屋に戻ると、先に戻っていたレオが水をガブガブ飲んでいるところだった。
 喉が渇いているのはグレイも同じである。


「俺にもくれ」

「ああ」


 グレイが頼むと、レオが水を入れたコップを手渡してくれた。
 それを一気に飲み干すと、コン! と音をたててテーブルに置く。
< 130 / 765 >

この作品をシェア

pagetop