心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
バタン
部屋の扉を閉めて、急いで階段を駆け下りる。
外にイザベラの馬車がないことを確認してから、2人は別邸を飛び出し夜の庭を猛スピードで走った。
屋敷に戻るなり、グレイは真っ直ぐにイザベラの部屋へと向かう。
別邸の鍵をいつものようにテーブルの上に乱雑に置くと、「ふぅ……」と一息ついた。
間に合った。
まだあの女には、俺がマリアの存在に気づいたことを知られたくないからな……。
イザベラの部屋を出てそのまま自分の部屋に戻ると、先に戻っていたレオが水をガブガブ飲んでいるところだった。
喉が渇いているのはグレイも同じである。
「俺にもくれ」
「ああ」
グレイが頼むと、レオが水を入れたコップを手渡してくれた。
それを一気に飲み干すと、コン! と音をたててテーブルに置く。