心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

「今まで、グレイ様から何かを求められたことがなかったので、何もしてこなかっただけでございます」

「俺から……」


 言われてみれば、家庭が崩壊してからというもの、グレイには何も希望や目的がなかった。
 ただ日々を生きているだけで、執事やメイドに特別に何かを頼んだ記憶がない。

 今まで、何かの情報を探らせたり、相談したり、執事であるガイルを必要としたことが……なかった。

 
「でも、なぜ俺なんだ? この家の当主はイザベラだろ? なぜそちら側にいかない?」

「あなたは祖父であるアーノルドによく似ております」

「……!?」
< 161 / 765 >

この作品をシェア

pagetop