心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

「あなたは悪魔の子なの。私を不幸にした、悪魔の子……。悪い子ね。しっかり罰を与えないといけないわ」


 イザベラはマリアの頬にそっと手を当てて、いつもと同じ台詞を吐く。
 目は焦点があっていないように見える。
 
 マリアがじっと見つめると、突然カッとしたイザベラが平手打ちをした。
 バチン! という音が部屋に響く。



 いたっ……



 マリアはなんとか声を抑えた。
 以前声を出してしまい、うるさいとさらに叩かれたことがあるからだ。

 声を出してはいけない。勝手に動いてはいけない。
 睨むように見てはいけない。怒ってはいけない。
 悲しんではいけない。泣いてはいけない……。

 マリアは必死にイザベラからの暴力に耐えた。
 おとなしくしているのが1番被害が少ないとわかっていたからである。

 キーズは手を出してはこないが、止めることもしない。
 部屋の隅に立って、ニヤニヤした顔で見てくるだけであった。

< 178 / 765 >

この作品をシェア

pagetop