心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「あなたは悪魔の子なの。私を不幸にした、悪魔の子……。悪い子ね。しっかり罰を与えないといけないわ」
イザベラはマリアの頬にそっと手を当てて、いつもと同じ台詞を吐く。
目は焦点があっていないように見える。
マリアがじっと見つめると、突然カッとしたイザベラが平手打ちをした。
バチン! という音が部屋に響く。
いたっ……
マリアはなんとか声を抑えた。
以前声を出してしまい、うるさいとさらに叩かれたことがあるからだ。
声を出してはいけない。勝手に動いてはいけない。
睨むように見てはいけない。怒ってはいけない。
悲しんではいけない。泣いてはいけない……。
マリアは必死にイザベラからの暴力に耐えた。
おとなしくしているのが1番被害が少ないとわかっていたからである。
キーズは手を出してはこないが、止めることもしない。
部屋の隅に立って、ニヤニヤした顔で見てくるだけであった。