心を捨てた冷徹伯爵の無自覚な初恋 〜聖女マリアにだけ態度が違いすぎる件〜

23 イザベラからの暴力


 その日、マリアは真っ暗な檻の中で丸くなって眠っていた。
 食事が届かなくなって3日。お腹が空いたという感覚もほとんどなかった。

 毎月のこと。毎月3日か4日はこの絶食期がくる。
 月が隠れて、マリアの力が使えなくなると誰もマリアの所には訪れない。

 他人には使えずとも、自分にはかすかに使うことができる『治癒』と『浄化』の力で、マリアはなんとか餓死や衰弱死することなく生きている。

 少量だが、水を出すこともできる。
 
 だがそのかすかな力も、怪我を完璧に治すまではできなかった。
 それを知っているイザベラは、力が使えなくなった初日にマリアの所を訪れる。


「さぁ、早くそこから出て来なさい。罰の時間よ」


 イザベラに言われ、マリアは檻から出た。
 足についていた鎖はキーズというネズミ顔の執事が取ってくれていた。
< 177 / 765 >

この作品をシェア

pagetop