心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

「それを知っていて、お前はマリアを放置していたのか? 助けることもせずに?」

「私は何も知らないことになっておりますので、手を出すことはできません」


 チラッと一瞬だけ、そう答えた男性がマリアを見た。
 無表情の中に見えた優しそうな目……その目を見た瞬間、あのいつの間にか置かれていたパンがマリアの頭に浮かんだ。



 あのパン……もしかして、このおじいちゃんが……。



「……お前も狂っているな」


 マリアには、そう言ったグレイの声が少しだけ悲しそうに聞こえた気がした。
 グレイはクルッと踵を返すと、部屋の出口に向かって歩き出す。


「グレイ! どこに行くの!?」
< 182 / 765 >

この作品をシェア

pagetop