心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「それを知っていて、お前はマリアを放置していたのか? 助けることもせずに?」
「私は何も知らないことになっておりますので、手を出すことはできません」
チラッと一瞬だけ、そう答えた男性がマリアを見た。
無表情の中に見えた優しそうな目……その目を見た瞬間、あのいつの間にか置かれていたパンがマリアの頭に浮かんだ。
あのパン……もしかして、このおじいちゃんが……。
「……お前も狂っているな」
マリアには、そう言ったグレイの声が少しだけ悲しそうに聞こえた気がした。
グレイはクルッと踵を返すと、部屋の出口に向かって歩き出す。
「グレイ! どこに行くの!?」