心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

25 本気で争う母と息子

 
 イザベラは優しく美しくおとなしい女性だった。

 ジュード卿がマリアとエマを連れてきた日からおかしくなってはいたが、1人で部屋にこもっては時々暴れて物を壊す……言ってしまえばそれだけだ。

 ジュード卿を責めなかったし、エマを責めたり攻撃することもなかったし、グレイに乱暴することもなかったし、使用人に暴力を振るうこともなかった。

 まだ幼いグレイを放置し、母としての役目なんて何もしなかったが、イザベラは人に対して攻撃するタイプではなかったはずである。

 そのイザベラが、現在まだ子どものマリアをあんなにボロボロになるまで痛めつけ、さらにはその命すら奪おうとしている。

 グレイ自身気づいてはいないが、自分の母親がそこまで落ちぶれていたのかとショックを受けた。
 
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