心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

「……人殺しになるつもりか?」

「あら。あの子は人ではないもの」

「そうか。ではお前を捕まえよう。身内が人殺しになるのも面倒だからな」


 グレイがそう言って一歩イザベラに近寄ると、今まで黙っていたキーズが2人の間に入ってきた。
 その手には短いナイフが握られている。


「困りますよ……グレイ様。どうかこのまま何も知らなかったことにしてくれませんか?」

「なんだと?」

「今や聖女を求めるお客様はとても多いのです。どのくらいのお金が入ってくるのかご存知ですか?」

「興味はないな」


 キーズはナイフをグレイに向けたまま、少しずつグレイに近づいてくる。
 グレイはその場から動くことなくキーズを睨みつけた。
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