心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 お水の中に入る?



 お風呂の存在すら知らなかったマリアにとって、水の中に身体を入れるという発想はなかった。
 驚いたが、笑顔のエミリーを見ていると全てお任せしてみようという気持ちになる。

 エミリーに服を脱がせてもらい、身体を支えてもらいながらマリアは人生初めての湯船に浸かった。

 ブワッと足の先から温かさが巡っていく。
 身体がぽかぽかして、とても気持ちいい。マリアは初めての感覚に心が震えた。

 髪の毛や身体を洗ってもらうのも、腕や足をマッサージされるのも、どれもこれも至福のひと時であった。


「温かくて、気持ちいい……」


 マリアがぽそっとそう言うと、エミリーは嬉しそうににっこりと微笑んだ。
 
 夢心地のままバスローブを着て部屋に戻ると、もうグレイもガイルもいなくなっていた。
 その代わり、エミリーと同じ制服を着たメイドが1人立っている。

 少しふっくらとしたそのメイドは、マリアを見るなり笑顔で挨拶をしてきた。
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