心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「この者は以前、猛獣との戦いで腕をなくしてしまったのだ」
国王がそう呟くように言うと、騎士は袖だけがペラペラと揺れている左腕を前に差し出した。
肘から先がない。
「この者の腕を元に戻せるか?」
少し悲しそうな顔でそう優しく尋ねてきた国王に向かって、マリアは「はい」と答えた。
騎士の瞳が期待と疑いの色で不安そうに揺れている。
トコトコ……と騎士に近づくマリア。
スッと両手を前に出し、騎士の左腕を見つめた。
国王や王妃、王子達、そして貴族達が固唾を飲んでその2人に注目している。
しーーんと静まり返った王座の間。
その時、マリアの黄金の瞳がさらに輝きを増してキラキラと光を放つ。
両手からは黄金の光が溢れ出し、騎士の左腕のあたりを覆っている。
「……っ!!」
「おお……っ!」