心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「……!!」
そういえば国王が「2人で散歩でもしてきなさい」と言っていたな……と王子は思い出した。
執事から視線を離した王子は、チラリと目の前に立っているマリアを見る。
生まれた時から聞かされていた伝説の聖女様は、想像とは違い自分より小さくとても幼い。
しかし今まで見たどの国の姫や令嬢よりも美しく、神秘的なその瞳は真っ直ぐに見つめることもできない。
王子はマリアと目が合うなりすぐに顔を背けた。
自分のそんな態度に執事から呆れた視線が送られていることには気づいていたが、どうすることもできなかった。
無理だ……! 散歩になんて誘えない!
またまた王子は助けを求めて執事を振り返った。
執事や中庭の周りで見守っていた騎士達が、皆小さなため息をつく。
「お腹は空いていませんか? もしよろしければデザートなど用意いたしますが」
見兼ねた執事が2人に近づき尋ねてきた。
正直今は緊張でデザートなど食べれる状態ではなかったが、エドワード王子は執事が来てくれたことに安堵の表情を見せた。